川上潤さん(高34)

「グローバルにキャリアを築く」

 

現役立高生への配布冊子(H23年版)より転載 当サイトへの掲載をご了解いただいております。

 

GEヘルスケア・ジャパン(株)

代表取締役社長兼CEO 川上 潤(昭和57年卒業)

東京大学経済学部、 米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院卒

私の職業

現在、私はGeneral Electric (GE)のヘルスケア部門の日本の事業を統括する仕事をしています。 GEは1892年に発明王エジソンにより創設され、従業員約30万人、世界180か国以上で事業を展開しているグローバル企業です。その一部門であるGEヘルスケアは、CTやMRI等の大型画像診断装置や超音波診断装置、麻酔器、心電計、病院向け情報システム等の開発、製造、販売を行う企業です。日本ではGEヘルスケア・ジャパン(株)が日野に本社工場を置き、全国55か所の拠点を通じ日々の事業を行っています。

 

「社長」の仕事とは「企業の進むべき道を示し、社員の努力の方向性を合わせ、かつ社員が働き易い環境・制度を構築することを通じて事業の最終的な結果に責任を負う」ということでしょう。それに「グローバル企業の…」という条件が加われば、「世界に置ける日本の“立ち位置”を定義し、世界に向けて製品やアイデアを発信してゆく」ことが加わると思います。GEヘルスケア・ジャパンでは、急速な高齢化が進む日本の医療へ様々な「解決策」を提供するという方向性の下、日々、新しい医療技術、製品、サービスの開発と普及に取り組んでいます。

 

ところで私は三多摩育ちでもともと全然グローバルではありません。また、経済学部卒で理系でもありません。そんな私がハイテク分野のグローバル企業で仕事をしているというのはあまりピンと来ないことかもしれません。ことほど左様に人生は計画し過ぎても仕方ないということです。皆さんの参考までにことここに至る経験に触れたいと思います。

 

学生時代

立高では野球部でした。2年生の時の国高の甲子園行きに大変悔しい思いをしましたが、そのお蔭で真面目に「甲子園」を目指して野球に取り組めたことは良い経験になりました。三つ子の魂百までとはよく言ったもので当時の野球部での経験や教えられたこが、今になっても私の行動や考え方の基盤になっています。 大学時代はボート部。ここでもいかに「強いチームを作るか」、「その為に必要なリーダーシップとは何か?」がテーマでした。あまり夢中だったので、正直、大学では殆ど学問はしませんでした。別にそれが良いと言っているわけではありません。でも学生時代はとても短い時間なので、何か一つの事に集中して本気になってやることがあったことは良かったことだと思っています。

 

就職/留学/アメリカで働く

就職は人と違ったことをしてみたいと思っていました。当時、「経営コンサルティング」はまだ草分けの時代でしたが。「データを駆使した論理的アプローチで強いビジネスやチームを作る」仕事だと思いました。それはまさに私が野球やボートでやろうとしていたことの様に思われました。当時コンサルの会社は外資系しかなかったので、必然的にアメリカ企業の日本法人に入ることになりました。これが図らずもグローバルなキャリアへの入口になったわけです。 やがてひと通り仕事を覚えて外資系企業の日本参入戦略や日本企業の中期経営計画作りの手伝いができるころになると、次はアメリカの経営大学院に行って修士(MBA)を取ることが必然的なステップに思われました。 この時点ではグローバルで戦うという様な明確な目標は無く、若手コンサルが一般的に描くキャリアパスに乗った道という感じでした。そんなわけで米ノースウェスタン大学の経営大学院に留学し、日本の大学で勉強しなかった分を大学院で…という趣旨だったのですが、実際は学問そのものよりは「グローバル環境」に身を置いたことの方が遥かに価値のあることでした。約7割のアメリカ人と2割のヨーロッパ人、残りに1割が日本人を含めた「その他」という環境下での競争。誰もお客さん扱いはしてくれません。初めて世界における日本や日本人の位置付けを思い知らされることになりました。大学院を卒業した後は日本に帰るのでなく、アメリカに残って約3年間コンサルの仕事を現地クライアント相手にやる道を選びました。プロとして自分がグローバルな場で通用するのかを試したかったからです。不安が一杯でしたが、同時期に大リーグに来ていた野茂投手の活躍が励みになりました。グローバル環境では、世界に通用するプロとしての技が一つあれば(例:野茂のフォークボール)、周囲の尊敬を勝ち得られるとてもオープンでフェアな世界であるということを実感できる経験でした。

 

帰国/企業経営へ

帰国後はコンサルティングから離れて自ら経営者として事業を営む道を選びました。GE は優れた技術を持つハイテク企業であると同時に優れたリーダーを輩出する企業として世界的に有名で、この会社を選んだことは正しい選択だったと思います。まず、文系の私が事業をする上で革新的技術がいかに重要であるかを学べました。技術の細部を全部理解する必要はないのですが、その活用の仕方や経営に与える影響を深く理解する必要があります。また、経営者としてお手本となるような優れたリーダーが社内に多く存在していることも大きな財産でした。国籍、人種を問わず、あの人の様な優れたリーダーになりたいと思えるお手本が多数居るのがグローバル企業の強みです。学ぼうとすればいくらでも学べる環境がそこにありました。

 

こういった経緯を経て私は現在の職業に就いています。人生は一回だけなのでこれが本当にベストだったかは分かりません。でも、皆さんに私のこれまでの経験を通じてアドバイスできるのであれば、以下の3点があります。

 

立高の諸君へのアドバイス

1)    世界に出る: 今後、世界はますます連結します。世界にはスゴイ奴がたくさんいます。日本に閉じこもっていたのではより大きな成長の機会を逃してしまいます。必ずしも外国で住めという意味ではなく、何をするにしても世界に通用する「本物」を目指す視点が重要になるでしょう。目線は高く、グローバルに…

2)    リーダーシップを発揮する:グローバルな場において普遍的に通用する力が「リーダーシップ」です。リーダーシップは役職や地位でなく、その人が果たす役割です。周囲の意見の最大公約数を取って調整する力ではなく、周囲に進むべき道を示して、皆をそこに引っ張ってゆく力です。この力があれば世界で通用します。

3)    地力をつける: リーダーシップの基盤となる「地力」を形成する上で学生時代はとても重要です。地力には、単なる知識や薀蓄でなく、自分自身の世界観に根差した物事の理解を示す「教養」や、四則演算の力、数量的なセンス、コミュニケーション力等の「スキル」の両面があります。高校時代は是非これらの地力作りに集中して下さい。

 

皆さんがそれぞれの分野で実り多い高校生活を送り、豊かな未来を創っていかれることを切に願います。