小澤聡さん(高37)

もし立高生時代の自分にアドバイスができたら

北海道立総合研究機構 地質研究所  主査 小澤 聡(高37回)

現役立高生への配布冊子(H23年版)より転載 当サイトへの掲載をご了解いただいております。

この企画への協力打診を頂き、母校への恩返しのチャンスとばかりに軽率にも二つ返事でお引き受けしてしまいました。しかし不覚にも、いざ書こうと自分の半生を振り返ってみて初めて、これまで特に明確な進路目標を定めたこともなく、その時その時の興味関心や事情(成績など)での選択を積み重ねて来ただけということに気付きました。という訳でこの“手紙”では、自戒と反省を込めて『もし立高生時代の自分にアドバイスができたら(略して「もしアド」)』ということで書かせて頂きたく思います。

私は、地質研究所という公設試験研究機関に勤務しています。その名の通り(北海道の)地質を研究するところです。地質というと何かとても古い時代(恐竜がいた頃とか)の地球の歴史など、実生活とはかけ離れたことを研究する分野と思われる方も多いかも知れませんが、実は地質学は幅広い応用先がある産業や生活との結び付きも深い学問です。

例えば、私たちが日々消費する地下資源(化石エネルギー、金属、非金属、温泉、地下水など)の開発、土木工事、環境対策(地盤沈下、地層汚染(有害物質の地下浸透))、防災対策(地震、火山、土砂災害(地すべり))など、実に様々な分野で地質学が直接的・間接的に役立っています。日頃、あまり地面の下を意識することは少ないかも知れませんが、この地球上で生きていく限り地質(大地の性質)との縁は切れません。時には人の生死にも影響します。将来、地質の道に進むかどうかは別に、地質(地学)を学んでおいて損は無いと思いますよ(私は高校で地学を履修しませんでしたが… 深く反省)。

さて地質研究所は、北海道立の試験研究機関ということで、地質学分野の中でもより直接的に北海道の産業振興、防災、環境保全などに役立つ研究に取り組んでいます。私自身の目下の研究課題は、地理情報システムを活用して、地質図や地下ボーリング情報などのデータベースを開発することです。大量の地質情報をデータベース化することで、例えば地震が起きた際にどこが揺れやすいかといった解析とか、インターネットなどの電子媒体を通じて分かりやすく情報提供することなどにも役立てられればと考えています。

立高~大学時代には楽しい思い出やそうでもない思い出もたくさんありますが、ここでは進路選択に関係することに絞って、できるだけ正直に振り返ってみたいと思います。

私は読書好きで、いわゆる乱読ですが高校時代には分野を問わず幅広く本を読んでいたと思います。色々なことに興味を持っていたので進路選択の際には、まず文系か理系かで悩みました。どちらも面白そうだったからです。結局、物理が一番得意だったこともあって理系を選択。(英語が苦手だったことも多少影響したかも知れません。伊倉先生すみません。)高3の時の担任が、物理学の大矢先生だった影響もあり、大学では地球物理学か物理学を学ぼうかなぁと漠然と考えていました。なんとなく自然科学系に引かれていた。

北海道大学を受験したのは、もちろん北の大地へのあこがれ(畑正憲さんの影響)もありますが、旧帝大でネーム・バリューがある割に入りやすかったという受験事情も多少影響したかもしれません。入学当初は地球物理学か物理学と思っていたものの、教養課程で勉強するうちに講義を受け教科書を読むだけの毎日に飽きてしまい、せっかく北海道にいるのだから野外に出て自然から直接学びたいという気持ちが高じてきました。そこで学部移行の際には説明会や先輩の話を参考に、地球物理学科では文献講読ゼミが主で野外調査は大学院からということもあり(まだ大学院進学は考えていなかった)、学科で野外調査ができるところということで地質学鉱物学科(古めかしい名前ですね)を選びました。

学科に移行してまず驚いたのは、自分から主体的に勉強しない限り、先生方は特に何も教えてくれないことです(もちろん講義はありましたが)。いきなり大人扱い?放任?された感じで面喰いましたが、読むべき文献の探し方から野外調査の段取りなどほとんどのことは大学院の先輩方が教えてくれました。自主巡検と称してあちこちと地層観察や化石採集に連れて行ってもらったり、慣れてくると今度は自分たちで企画して後輩を連れていったり。卒業論文は(大学受験より)大変でしたが指導教官や先輩方のご指導で何とかこなし、あっという間に数年が経って、研究者になろうという自覚もないまま勢いだけで大学院に進学。こういうことをしながら生活できたら良いなぁなどと思い始めたのですが、上を見ると博士課程を修了したオーバードクターの先輩方が大勢残っていらっしゃる。研究者ポストは少なく、下手をすると40過ぎまでアルバイト生活。ようやく世間の厳しい現実に気付き、まじめに就職活動しようかと思った矢先に現職場の募集があり、研究の仕事で生活できるならと思い切って大学院を中退して就職を選んだ次第。

私の場合、特に高校時代、進路を選ぶことがその他の自分の可能性を狭めることになるような気がして、なんとなく先延ばしにしてきたように思います。今にしてみると、たとえ何を選んでも、そこで何だかんだとやっている内に次の可能性がまた開けてくる。だから臆せず好きなことを選べば良いと思います。地質学を学んだ同輩もその後、大学、行政、警察(鑑識)、マスコミ、地質調査会社、教師などなど様々な分野に進んでいます。研究職に進んでも、研究の方向性をどう選ぶかで係わる世界が大きく変わってきます。

「人間万事塞翁が馬」人生における損得は人には計り知れません。先々を心配し過ぎず、興味を持った道に取りあえず進んでみるのもありかと(開き直りか?)。自分は何が好きか?結構難問です。経験してみないと分からないこともあります。高校時代には勉強、部活、立高祭、色々なことに取り組んで自分を試してみることが大切だと思います。最近は、多くの大学でオープン・キャンパスなどをやっています。また、色々な学会が高校生向けの講演会やイベントを開催しています。ぜひそういう機会を逃さず情報収集を心がけることもお勧めします。    お体大切に。立高生活を楽しんでください。